花のニュース

散歩の途中で見かけた、名前を知らない植物のメモ

天然記念物の花畑、住民が再生へ 伊吹山のシモツケソウ

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シモツケソウの花。7~8月に開花する。群落は減ったが伊吹山の山頂付近の登山道そばで見られた=8月1日、坂田達郎撮影

 滋賀と岐阜県境の伊吹山で、鮮やかなピンクの花を咲かせるシモツケソウが減っている。一帯の花畑は国の天然記念物にも指定されており、地元住民らが保全活動を進めている。原因は温暖化の影響や獣の食害が指摘されるがはっきりしないという。

 シモツケソウは関東以西の山地に生えるバラ科の多年草で、7~8月に花をつける。保全活動などをする市民団体「伊吹山もりびとの会」の長束憲一さん(73)によると、伊吹山では5年ほど前から群落の減少が目立ち始め、今季咲き誇った場所も最盛期の半分ほどだったという。植生を広げているのは、道端でも見かけるイラクサ科のアカソなどという。

 ふもとの住民や同会は、シモツケソウの再生活動を進める。昨年10月に群落の一部で地中に残った苗を植え直した。今春には約400平方メートルを金網で囲い、シカやイノシシなどの対策を施したが、苗の定着率は約2割にとどまった。国や両県、住民らでつくる「伊吹山自然再生協議会」は山頂に至る斜面にも動物対策のネットを張ることなどを検討する。長束さんは「群落は伊吹山の目玉だが、最近は『どこにあるのですか?』と尋ねられる機会が増え、残念でならない」と話す。伊吹山のガイド本を記した滋賀県草津市の草川啓三さん(66)も「シモツケソウは北アルプスなどにも咲くが、伊吹山ほど見事に咲き誇った場所を知らない」と指摘する。

 登山口近くに住む滋賀県米原市上野の鹿取清己さん(66)は「伊吹山では1960年ごろまで牛の飼料として草を刈っていた。人手が加わることで植生が保たれてきた面もあると思う。地道に再生に取り組みたい」とする。伊吹山の植物に詳しい大川勝徳・金沢大名誉教授(花き園芸学)は「温暖化が進んだことで、生育に適する植物が変わった可能性もある。勢いが強い植物を適切に取り除くなどして自生しやすい環境をつくり、再生に有効な道を探ってほしい」と話す。(坂田達郎)

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 〈伊吹山〉 標高1377メートル。2003年に高山植物固有種が「山頂草原植物群落」として国の天然記念物に指定された。今年5月から、植物保全などを目的に入山協力金(1人300円)を求めている。ドライブウェイが1965年に全線開通し、昨年(4~11月)の利用者は約24万6千人。高山植物をめぐっては、アポイ岳北海道様似町)の群落が特別天然記念物に、秋田駒ケ岳秋田県仙北市)の群落が天然記念物に指定されるなどしている。

2014年9月21日10時59分 朝日新聞